沖縄県人は「おせち料理」を食べない?


《追記》の「もち」については、写真の下にあります。

正月のラジオ放送を聴いていたら本土出身(男性)と沖縄県人(女性)の二人のパーソナリティが会話をしていた。
本土出身「お正月ですねぇー。もう、おせち料理は食べましたか?」
沖縄出身「沖縄では おせち料理は食べないんですよぉ」
本土「エー、沖縄の皆さんは おせち食べないんですか。じゃあ、正月は何を食べるのですか?」
沖縄「私の家ではオードブルです」
本土「じゃあ、雑煮は?」
沖縄「お雑煮も食べませんねぇ」
本土「へぇ〜、そうなんだ」

本土出身である私も「おせち料理」を食べる習慣がなかったので、沖縄の人が「おせち」を食べるか、食べないかなんてことには関心がなかった。本土では年末が近くなると、デパートやスーパー、有名な料亭は、1段〇万円もする「おせち」の宣伝をする。ところが、沖縄では「オードブル」の予約受付は見るが、「おせち料理」の広告はあまり見ない(最近は大型スーパーで「おせち料理」の予約受付のポスターを見るので、正月料理も徐々に本土化が進んでいるようだ)。そこで、私の所属するサークルの皆さんに、沖縄の正月料理について聞いてみた(一部重複のご意見があるが、そのまま掲載)。

・ 「おせち料理」とは言わないが、沖縄にも正月料理はある。クーブイリチー(刻み昆布と豚肉・切り干し大根の煮炒め)、クーブ巻き(白身魚を巻いた昆布巻)、ジューシー(炊込みご飯にラードやマーガリンを混ぜる)、ラフテー(泡盛で煮込んだ豚の角煮)、田芋の田楽、ソーキの煮付けなど(カッコ内は、私が、あとで書き足した)。
・ 重箱に詰めたものを「おせち料理」と言うなら食べているが、中身が本土とは違うよ。
・ 正月用の「おせち料理」ではないが、年中行事のときに重箱にかまぼこや天ぷらを並べる。正月にも同じものを食べる。これを御三味(うさんみ)と言う。−下の写真:左(all about)−これをご先祖様にお供えしたあと、「うさんでーさびら」と言いながら御下がりして、皆で食べる。そうすると、ご先祖様が子孫を守ってくれると言われている。
(ご参考)重箱に入れるのは、カステラかまぼこ、紅白かまぼこ、天ぷら、田芋、ごぼう、こんにゃく、揚げ豆腐、昆布、豚の三枚肉の9品が基本で、家庭によっては大根の煮つけや、白身魚の昆布巻きなどを入れる。最近は、ケンタッキーを入れる家もあるとか。(ご参考)の品目は、私がNETで確認して追加した。
・スーパーや弁当屋でオードブルを注文する。我が家に大勢、人が来ても皆で食べられるから、これを正月料理にしている。オードブルと言っても、洋食系のものは入れないから、本土のものとは違う。ほとんど揚げ物ばかり。かまぼこも見えているが、沖縄のかまぼこは揚げて造るから揚げ物だよ。下の写真:右(all about)。
「沖縄かまぼこ」について、詳しくは⇒コチラから
・お惣菜をお重(じゅう)に詰めるだけ。本土のようなタツクリ、栗きんとん、黒豆は食べないけれど、復帰後は食べ物の本土化も進んでいるよ。本土系のスーパーに行くと「おせち」のパックもたくさん売っている。
・御三味(うさんみ)とセットで作る汁物は、他の家では中身汁が多いが、我が家はイナムルチは欠かせないよ。
(注)中身汁(なかみじる)…豚の内臓やホルモンを下処理をした後、鰹と椎茸の戻し汁で煮込んだもの。
(注)イナムルチ…沖縄のお祝い料理の一つ。語源は「猪のようなもの」。昔はイノシシの肉を使ったそうだが、今は豚肉を使う。細い短冊切りにした豚の三枚肉、こんにゃく、かまぼこ、しいたけ、油揚げなどを白みそ仕立てにした汁物。イナムドゥチともいう。沖縄諸島にはリュウキュウイノシシという本土と比べると小さめの猪が生息している。
・餅を入れた雑煮は食べないけれど、最近は、中身汁に餅を入れることはあるよ。
・大晦日にはソーキそばを食べ、正月には豚肉の入ったクーブイリチー、中身汁を食べる。
(注) クーブイリチー…昆布を豚肉と一緒に炒め煮にしたもの。クーブは昆布のこと。“よろこぶ” のゲン担ぎ。
・二段の鏡餅を飾るのは昭和47年の復帰後だと思う。それまでは、もちの三段飾りを三飾り、炭を昆布を巻いたもの、橙を赤、黄、白の色紙を三枚重ねし正月飾りにしていたが、戦前のことは分からないねぇ。

ざっと、こんなご意見だった。今回は聞き取りにたいへん苦労した。料理の名前がほとんど私にはなじみのない名称ばかりだったので、聞き取って紙に書いて確認してもらうという作業が必要だったからである。「えらく研究熱心だねぇ」と褒められたのか、呆れられたのか分からなかったが、確かに、本土の「おせち料理」とは違うということだけは分かった。

お雑煮は食べることが少ないそうだが、スーパーで切り餅は売っている。移住者用かもしれないが、「サトーのパリッとスリット」も「越後の生一番」も「きむらのうさぎ4分割」もある。角餅の方が多いようだが、丸餅も売っているから西日本の方も安心して沖縄にお越しやす! (^-^) なお、「もち」については、写真の下に《追記》した。



重箱料理 オードブル
重箱料理は「御三味(うさんみ)」という オードブルは揚げ物ばかり


《追記》「もち」について…沖縄県人は「お雑煮」を食べることは少ないそうだが、「もち」はよく食べる。春には柔らかいヨモギの葉を使う「フーチモチ」。小豆をまぶした「フチャギ」。「カーサームーチー」は、サンニンやクバの葉で包んで蒸して神様にお供えし、家族でおさがりを食べる。これは、それぞれの家庭で作られることも多い。

法事、シーミー、盆など先祖祭祀には、供物として「もち」を奇数個を重箱に詰めた「もち重」を作り、タンカーユーエー(赤ちゃんの満1歳の誕生日)には、紅白の餅を箸でちぎって食べさせ健康と成長を願う。また、七夕や彼岸などには「あんもち」を作る。このように、神様や先祖の霊前には「もち」をお供えし、折り目、節目の度に「もち」は欠かせない。牧志の公設市場近くの松原屋製菓店に行けば、多くの種類の「もち」や沖縄伝統菓子が売られている。私は牧志の桜坂劇場に映画を見に行くたびに立ち寄り(新型コロナ禍以降は行っていないが…)、1個買って(バラ売りしている)歩きながら食べている。私の口に会えば、もう一度立ち寄り2〜3個買って家に持ち帰る。次に行ったときは違う種類を買う。

なお、沖縄伝統のお正月飾りで、仏壇や床の間に供えられる「御花米(はなぐみ)」と一般的な正月飾りについては、⇒コチラから

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