テンペスト(池上永一著)


テンペスト

『テンペスト』

上下巻 各1,500円

角川書店

著者の池上永一氏は、昭和45年、沖縄県生まれ。平成6年、早稲田大学在学中に「バガージマヌパナス」で第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞。ほかの著書に「黙示録」「トロイメライ」「夏化粧」などがある。このサイトでご紹介している同氏の著作は、今回が3作目である。前2冊の書名は後記する。

19世紀末の琉球王朝が舞台 。誰よりも聡明な少女・真鶴は、女であるというだけで学問を修められないことを不公平に思っていたが、跡継ぎと目されていた兄の失踪を機に宦官・孫寧温と名乗り、性を偽って男として生きていくことを誓う。科試に合格した寧温は、王府の役人として、降りかかる難題を次々と解決し、最速の出世を遂げていく。

そんな寧温は数々の敵に阻まれ、遂に謀反人として八重山に流刑される。寧温は真鶴に戻り、九死に一生を得るが、その類稀なる美貌と才覚を見初められ、自分の意思とは裏腹に王の側室として王宮へ返り咲くこととなる。平穏な生活はペリーの来航により急を告げる。外交に長けた人物として、八重山にいると思われた孫寧温に対して王府へ戻るよう王命が下り、真鶴は昼間は宦官・孫寧温として、夜は側室・真鶴として一人二役をこなすことになる。


NHK「BSプレミアム」で、平成23年に放映されたそうだ。主役は仲間由紀恵さん(二役)で、上原多香子さんら沖縄県の出身者が多数出演したという。私はテレビ製作されたことも知らなかったので、配役の先入観ナシで読むことが出来た。もし、知っていて読み進めていくと、登場人物に俳優の顔が浮んでしまうところだった。人間関係が複雑に入り乱れ、主人公が男として、また女として目まぐるしく入れ替わり、主人公を取り巻く環境は、まるで激動の嵐が通り過ぎるように描かれているところから、このタイトルが付けられたのかもしれない(テンペストとは、英語で「嵐」、「暴風雨」、「動乱」などを意味する。シェイクスピアにも同名の作品があるのはご承知のとおり)。 著者は「宦官のヒロインの波瀾万丈な人生をジェットコースターに乗ったようにお楽しみください」とコメントしている。池上氏の近著「黙示録」がそうであったように、この作品のストーリーも少女マンガチックに展開するので、上下巻で800ページ超という大長編にも拘わらず、一気に読ませてくれる。私はストーリーを追いたい一心で、ジェットコースターのように読み飛ばしてしまった。そうしないと、800ページはシンドイ。

平成20年発刊。同21年の本屋大賞第4位。 単行本は上下2巻だが、文庫は4巻に分冊されている。



◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
  ・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
  ・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
  ・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
  ・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
  ・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
  ・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
  ・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
  ・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
  ・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
  ・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
  ・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「ヒストリア」(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
  ・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
  ・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
  ・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
  ・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
  ・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
  ・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
  ・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
  ・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
  ・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
  ・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
  ・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
  ・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
  ・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
  ・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから
  ・「翡翠色の海へうたう(深沢 潮著)」⇒ コチラから

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