豚の報い(又吉栄喜著)


豚の報い

『豚の報い』

1,068円 文藝春秋

著者の又吉栄喜氏は、昭和22年、沖縄県浦添村(現浦添市)生まれ。琉球大学文学部卒業後、平成11年まで浦添市役所勤務の傍ら執筆。新沖縄文学賞、すばる文学賞などを受賞。この作品で、平成7年、芥川賞を受賞。

ある日、突然、沖縄の浦添のスナック「月の光」に豚が闖入してきた。豚がもたらした厄を落とすため、大学生の正吉(しょうきち)は、スナックの三人の女たちの案内人として真謝島の御嶽(ウタキ)に向かう。ひたむきに生き、ときにユーモラスな沖縄の人々の素朴な生活を生き生きと描く。また、海の描写はそれだけで読む者を魅了する。選考委員の圧倒的支持を得て第114回芥川賞を受賞した、と本の解説にある。

女達の様々な過去が語られ、沖縄の風習に従って風葬されている父の遺骨と正吉の緊張感のある出会いが描かれる。女達は時にユーモラスであり、愚かしくもあり、実に逞しい。沖縄の庶民のバイタリティが骨太く見事に書き込まれている。沖縄出身の小説家は、作品に島言葉を多用するので、本土出身者には理解できないことも少なくないが、この作品は、標準語を主体として会話が進んでいくので、容易に読むことが出来た。


先日、著者の講演を聴く機会があった。この作品について「豚は祈りの象徴であり、魔除けにもなり、逆に魔物を招くこともある。内面のものを全部、出し切ったことにより奥深く沈んでいるものをが出てくる。自分の近くには神様がおり、それを物語に普遍化した」と語っている。また、物語の舞台となっている真謝島は、久高島や津賢島を想定して書いたそうだ。著者は子供の頃、エイサーが怖かったとか。夜中にエイサーの太鼓が聞こえてくるたびに、そのなかに死んだ青年が紛れているのではないか、との思いがあったと述べている。今のエイサーは、踊りのパフォーマンスに熱を入れる芸能のように思われているが、もともとは、死者をあの世に送るための念仏踊りが起源であったのだ。

平成11年、崔洋一監督、小澤征悦、あめくみちこ、早坂好恵、岸辺一徳ら出演により、映画化もされている。また、本の表紙は晩年、奄美を描き続けた故田中一村氏の作品が使われている。なお、芥川賞の " 又吉" と言っても、平成27年、「火花」で受賞した、お笑いコンビ・ピースの "又吉直樹氏" とは関係ない。



◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
  ・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
  ・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
  ・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
  ・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
  ・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
  ・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
  ・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
  ・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
  ・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
  ・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
  ・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「ヒストリア」(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
  ・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
  ・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
  ・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
  ・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
  ・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
  ・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
  ・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
  ・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
  ・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
  ・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
  ・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
  ・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
  ・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
  ・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから

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