宇喜也嘉(おぎやか)の謎(渡久地十美子著)


宇喜也嘉の謎

『宇喜也嘉の謎』

1,500円+税 ボーダーインク

実は、最初にこの本を読んだのは4年ほど前のこと。当時は、琉球の歴史に少し興味を持ち始めたころだったが、宇喜也嘉は、我が子を王にするために陰謀を企てた側室という、どこにでもあるような話だったので、あまり興味がわかず、転居の際、要らない本としてまとめて処分してしまった。ところが琉球の歴史を真剣に読んでいくうちに、第二尚氏の初代王の妃(きさき)なのに、王族の墓である玉陵に祀られなかったばかりでなく、琉球王朝の正史からも、その存在を認知されなかったという生涯に俄然、興味を持ち、読み直したいと思ったのだが、この本は、すでに絶版となっており、那覇市内の古本屋で探したが、もともと発行部数が少ない本だったらしく見つからなかった。アマゾンでは、古本なのに4,500円もする。一度、読んだ本を4,500円で買うのは面白くないので、図書館で借りることにした。

前置きが長すぎたが、まず、宇喜也嘉がどんな人物だったのか Wikipedia風にご説明すると、
宇喜也嘉(おぎやか、1445年〜1505年4月5日)は、第二尚氏王統の初代尚円王(金丸)の王妃で、第3代尚真王の王太后。 世添御殿(よそえうどぅん)こと宇喜也嘉は、20歳の時に金丸(後の尚円王、当時50歳)へ嫁いだ。宇喜也嘉は王一族の玉陵への被葬者の資格について記した玉陵の碑文に、尚円王と宇喜也嘉の子孫のみが記される一方で、尚宣威王など、その血統外の者は除かれ、これも実権を握っていた宇喜也嘉の意思だと考えられている。ただし、玉陵からは宇喜也嘉の名を記した厨子甕(骨壷)は見つかっていない。


渡久地十美子氏は、著作の中で次のように述べておられる。

宇喜也嘉は、極悪非道の外面如菩薩内心如夜叉 (げめんにょぼさつ ないしんにょやしゃ : 表面は菩薩のように柔和だが、心のなかは夜叉のように邪悪で恐ろしい) で、我が子を王にするため、尚円の正妻とその子を人気のない所におびき出し、第一尚氏の残党の仕業に見せかけて惨殺した。また、尚円の跡を継いだ第二代の王、尚宣威が即位して6ヶ月の後、策略を用いて退位させた。そして、わずか12歳の我が子、尚真を第3代の王につかせ、後見の立場を利用し、何かにつけて政治に口を出し、自ら采配を振るうようになったというのだ。ところが、死後、本来なら王家一族の眠る墓陵に祀られるはずだったが、人里離れた山の中に葬られてしまった。

その場所が、下の写真である。ここは、現在の浦添市前田というところで、同書に記された場所を探し歩いて見つけたものである。日本キリスト教団の納骨堂の横にあった。何故、そんな場所にあるのかという理由は、土地の所有者がキリスト教団に寄付したことによるそうだ。残念ながら今では、宇喜也嘉の墓があったことを示すような痕跡は何もない。現状から見るに、崖地を掘抜いて墓口を塞いだ浦添ようどれのような形だったろう。他の王の墓に見られるような白漆喰の化粧をした痕跡も見当たらなかった。著者の渡久地十美子氏によれば、宇喜也嘉の厨子甕は、本土復帰前に盗掘に遭い行方不明になってしまい、香炉も消失していたのだそうだ。



宇喜也嘉の墓

渡久地十美子氏が宇喜也嘉の墓跡だといわれたところ。同書に記載された場所である。

王妃でありながら、このような扱いを受けたのには理由があった。

我が子を王に就けたときの宇喜也嘉は32才。権力の甘い蜜を存分にすするようになり、夜ごと寝屋にお気に入りの男を取り替えては引き入れため、父の分からない子供を次々に産んでしまった。王の尚真は、そんなスキャンダラスな母を潔しとせず、また、自分が王に即位する前に、宇喜也嘉が部下に命じて尚円の王になる前からの妻とその子を惨殺したという秘事も知り、そんな事件が後世に伝わっては、政権存続の一大事になると、その事実を闇に葬るため、宇喜也嘉を王の一族が眠る玉陵には祀らず、当時は道もなかったと思われるような人里離れた辺地に葬り、王族として扱わなかったのであった。

その昔は、この場所を宇喜也嘉ムイまたは前田ムイと呼び、王家ゆかりの墓であったことを知る人もいたが、今では、それを知る人も少ない。

以上が、霊の声を聞くことができる神人(かみんちゅ)、渡久地十美子氏の「宇喜也嘉の謎」に描かれた琉球のほんとうの歴史の概要である。これを絵空事と一笑に付すか、隠されてきた歴史の真実と見るかは、読み手がご判断を…。



◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
  ・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
  ・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
  ・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
  ・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
  ・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
  ・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
  ・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
  ・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
  ・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
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  ・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
  ・「ヒストリア」(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
  ・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
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  ・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
  ・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
  ・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
  ・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
  ・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
  ・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
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背景の「読谷山花織」は、「ゆたんざはなうぃ」または、「よみたんざんはなおり」と読みます。琉球王朝のための御用布として織られていました。絶滅寸前だったものを、昭和39年に読谷村で「幻の花織」として復活しました。