沖 縄 移 住 生 活 始 め ま し た
『辻の華』時事通信社 |
著者の上原栄子さんは、大正4年、沖縄に生まれる。4歳のとき、那覇市の辻遊郭に売られ、昭和19年まで そこに暮らす。戦場を生き抜き、戦後はアメリカ占領下でメイドなどいろんな職場で働く。その後、「8月15夜の茶屋」(松乃下)という料亭を経営。昭和27年、米国民政府勤務のアメリカ人と結婚し一児をもうける。昭和46年、夫に先立たれる。平成元年4月、この本を出版。翌、平成2年12月、75歳で生涯を閉じる。こういう経歴である。 |
その当時、男の子なら「糸満売り」(イチマンウイ)といって、糸満の漁夫として売られたそうだ。糸満では買い取った男の子を船に乗せて海に連れて行き、素潜り漁で魚が漁れるまで船には上げてもらえないという過酷な日々を過ごすことになる。女の子なら「辻売り」(チージウイ)といって、辻遊郭に「ジュリ」として売られたのである。「ジュリ」とは、沖縄の方言で遊女のことである。上原栄子さんも、その一人だった。
Wikipediaによると「日本の一般的な遊郭では、客席において遊女が客に食事をねだり、それによって利益を得ることが当たり前であったが、辻遊郭においては そのような振る舞いは見られなかった。病に伏した時は手厚い看護がなされ、子を産むことも比較的自由で、共同体によりよく面倒が見られているなど、独特な風習が持たれており、辻の遊女の待遇はあくまで相対的にではあるにせよ、恵まれていた部類に入るとみられる。前述した初御客の際などは遊女の一世一代の初行事として、抱母は調査、準備に万全を尽くし、神仏にまで祈願し自ら不寝番まで行った。また、客選びについて大きな自主性が与えられると同時に、琉球女は情が深いものであり、身体を売るだけにない上客とは一心同体となり その成功を応援し、時として大恋愛に発展する場合も多く見られた。そう言った事情であったので、新しい客を取る際には、いちげんさんはお断りと、仲人が必要とされる例も多かった。この辺りは、辻が大きな自治が認められていた点、抱母や有力者の多くが自らも遊女であった点が、この独特な風習を形づくったと思われる」という。
『水滴』で芥川賞を受賞された目取真俊さんのブログ「海鳴りの島より」に、上原栄子さんが戦場の体験を記した部分が紹介されている。お読みになる方は ⇒ コチラから。
平成元年の出版なので書店では手に入らなかったが、古本屋で上下巻ともに各800円で入手できた。アマゾンをチェックすると、下巻は1,300円で新しい本が入手できるが、上巻は古本でも1,490円となっていた(平成29年4月12日調べ)。沖縄なら図書館にあるかもしれない。
なお、那覇市で行われる「ジュリ馬祭り」については ⇒ コチラから。
◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「ヒストリア」(池上永一著)」⇒こちらから
・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから
・「翡翠色の海へうたう(深沢 潮著)」⇒ コチラから
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