ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)


琉球の歴史

『ほんとうの琉球の歴史』

1,296円

角川学芸出版

この本を知っていただくため、まず、著者のご紹介をしたい。渡久地十美子氏は、沖縄県今帰仁村生まれ。お告げに従い、昭和63年頃より神に仕える身となる。では「ユタ」かというと、ご本人はユタを嫌っており、「ユタ」と呼ばれることも拒否しておられる。歴史の研究者でもないのに、こういう本が書けたのは、副題に「神人が聞いた真実の声」とあるのだが、渡久地氏は神に仕える身なので、実際に歴史上の人物とお話をしたという、いささか眉唾ぎみの説明がある。そのご本人が言うところの歴史上の人物の中には、アマミク、シネリクという神話の世界にまで遡るので、にわかには信じられないのだが、物語としては たいへん面白く、一気に読んでしまった。他の著作には、「ほんとうの琉球の歴史2 尚円王妃 宇喜也嘉の謎」、「祭祀のウソ・ホント」などがある。全部読んだが、私には、この本が 一番面白かった。

出版社の解説は「沖縄は、かつて琉球王国という独立国家であった。未だ解明されてない多くの謎に包まれた琉球の史実を紐解きながら、神人である著者が自分の活動を通してのみ知り得ることができた琉球史の『真実』に迫る」というもの。

図書館で、この本を手にしたのは、こちらに来て、断片的にしか読んだことのなかった琉球の歴史を、通史として読みたいと思ったからである。


渡久地氏が主張しているのは、
 ・ 沖縄の正史「中山世艦(ちゅうざんせいかん)」は、当時の薩摩藩の意向に沿って書かれている。
 ・ 同様に「中山世譜(ちゅうざんせいふ)」や「球陽(きゅうよう)」も薩摩によって書き換えられている。
 ・ 最初の中山王の瞬天(しゅんてん)は、中国の上海辺りからやって来た。
 ・ 第一尚氏(しょうし)は伊平屋島の出身だが、先祖は中国の杭州からやって来た。
 ・ 勝連城の按司(あじ=首長)だった阿麻和利(あまわり)は逆賊で、王府に反旗を翻したというは陰謀だった。
などなど、一般的に知られている沖縄歴史概念を覆す記載が多く、現代の歴史学者の研究方法を手厳しく批判している。この本の内容は、極めて非科学的な論理から発しているが、もともと歴史書は、時の政権に都合よくかかれたものなので、「中山世艦」などが、史実と異なる記述がされていることは容易に想像できる。ただ、本書に書かれていることが事実かどうか、私には分からないので、正統(?)な歴史研究者とぜひ、対決していただきたいものである。平成23年10月刊。新品は、書店でもネット(アマゾンで古本が4,100〜9,700円)でも入手困難なので、図書館へ。

《追記》平成29年5月、『本当の琉球の歴史 増補版』の発売記念トークショーがジュンク堂書店で行われた。増補版は沖縄の新星出版から発刊。

2021/02/01、この本の著者渡久地十美子さんが、本部町の墓から石棺2基を盗んだとして沖縄県警に逮捕されました。詳しくは不明ですが、テレビニュースの報道内容は ⇒ コチラから



◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
  ・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
  ・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
  ・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
  ・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
  ・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
  ・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
  ・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
  ・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
  ・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
  ・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
  ・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「ヒストリア」(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
  ・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
  ・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
  ・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
  ・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
  ・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
  ・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
  ・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
  ・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
  ・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
  ・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
  ・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
  ・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
  ・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
  ・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから
  ・「翡翠色の海へうたう(深沢 潮著)」⇒ コチラから

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