本屋になりたい(宇田智子著)


本屋になりたい

『本屋になりたい』(新書版)

886円 筑摩書房

沖縄に移住して起業しようと思っている方もおられるだろう。深い付き合いではないが、本土出身で私の知っている沖縄在住起業家は、料理店、ラーメン店、ベーカリーショップ、ダイビングショップ、レンタサイクルショップ、サプリメント販売の代理店など---。おそらくは、相当なご苦労をされて店を維持しておられるのだろう。そんな中にあって、大手の書店勤務を経て古本屋を始めた方がおられる。その経過をつづった本も出版しておられるので、実名を出してもお咎めを受けることはないだろう。宇田智子さんという方である。誰でも知っている国立大学を卒業してジュンク堂(国内最大手の書店)に入社。那覇市にジュンク堂ができたとき、自ら希望して東京から沖縄に移られ、7年後に独立し若くして那覇市牧志の公設市場に、売り場面積3坪という古書店「ウララ」を開業された。取り扱っているのは、主に沖縄県産本。つまり、この店では、沖縄生まれの古本を販売している。

この本は、そんな宇田さんのエッセイである。平成27年6月発刊。宇田さんの著作は、私はこの本が初めてだが、この本の前に、「那覇の市場で古本屋―ひょっこり始めた〈ウララ〉の日々」というタイトルの本を平成25年7月に出しておられるので、「本屋になりたい」は、その続編になる。


出版元の筑摩書房HPの紹介によれば「本屋になりたい」という気持ちのままに東京の巨大新刊書店から沖縄の小さな古本屋へ。この島の本を買取り、並べて、売る日々の中で本と人のあいだに立って考えたこととは…、とある。印象的な部分は、「店を始めるのに必要なのは、勇気というより確信ではないでしょうか。ここでなら面白いことができる。ここでやるしかない。そう思える場所に出会ったことが、始まりでした」というところである。移住を迷っている人には背中を押してくれる文句だ。また、古書店の裏側事情だけでなく、出版社と新刊書店、図書館と古書店の関係や、はたまた出版業界の実態にも触れられ、興味深く読むことができた。

公立図書館の貸し出しにより本が売れなくなったとして、新潮社など大手出版社や作家らが、発売から一定期間、新刊本の貸し出しをやめるよう求める動きがあると新聞で読んだ。本を売る者と貸す者、相反する利害のはざまで、出版文化のあり方については、さまざまなご意見があろうが、本が売れないからといって、その矛先を図書館に向ける某出版社の某社長に対し、「図書館の本であっても、自分の本を読んでもらうと嬉しい」と言っておられる宇田さんなら、どのように思っておられるだろう。この本を読んで以来、一度、この古書店に行ってみたいと思っているが、今のところ探している本もないし、牧志には他に用がないので、なかなか行けない。店の隣が漬物屋さんと洋服屋さんなら、古書店独特のカビくさい臭いは しないだろうなぁ。

著者にお会いしたことはないが、すごく素直で、物事を真面目に考えることができる人だと思う。文章にも人柄がにじみ出ている。沖縄に移住しようと思っている人、沖縄に来て起業しようと思っている人には是非とも読んでほしい本である。



◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
  ・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
  ・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
  ・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
  ・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
  ・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
  ・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
  ・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
  ・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
  ・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
  ・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
  ・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「ヒストリア」(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
  ・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
  ・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
  ・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
  ・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
  ・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
  ・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
  ・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
  ・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
  ・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
  ・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
  ・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
  ・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
  ・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
  ・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから
  ・「翡翠色の海へうたう(深沢 潮著)」⇒ コチラから

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