沖 縄 移 住 生 活 始 め ま し た
『トロイメライ』 1,600円 角川書店 |
著者の池上永一氏は、昭和45年、沖縄県生まれ。平成6年、早稲田大学在学中に「バガージマヌパナス」で第6回 日本ファンタジーノベル大賞を受賞。ほかの著書に「黙示録」「テンペスト」「夏化粧」などがある。このサイトで紹介している同氏の著作は、今回が4作目である。前3冊の書名は後記する。 |
登場人物は、いずれも愉快な個性を持つ。その彼や彼女らは、いずれもエネルギッシュで、主人公の武太を子どもの頃から知っているか、幼馴染という濃厚な人間関係がシチュエーションとなっている。しかし、第一夜(話)で、大貫長老が「お前が憎い!お前が憎いっ!お前が憎いっ!」と、武太をキセルでぼこぼこにする場面がある。すると武太は、「アガーッ、アガー!」と叫ぶ。一体、何が始まったのか全く理解できなかったが、読み進んでいくと分かってくる。この場面は、全編を通して繰り返されるシーンだが、あまりにも唐突だったので印象に残った。「アガーッ、アガー!」は、「痛い、痛い」という沖縄の方言だそうだ。なお、一話に一人は前作の「テンペスト」のキャストが登場する。もし、お読みになるなら「テンペスト」を先に読んでからの方が理解しやすい。
殺人の容疑者の裁判を自国で行うことができないくだり(第二夜・黒マンサージ)は、現実の沖縄においても日米地位協定と名を変えた治外法権とも重なり、必殺仕事人ともいえる怪傑黒頭巾に拍手、喝采を送ってしまった。ただし、文中の判決文や口上覚などの文書資料が随所に出てくるが漢文で書かれている。漢字なので意味は類推できるが、漢文の読み方は、50年も前に習ったので、悲しいかな忘れてしまった。 (--、)
第三夜(イベガミの祈り)は、沖縄では「糸満売りに出す」というのが男の子に対しての脅し文句という話。私が子どもの頃、本土では「サーカスに売る」と言うのが、子どもが親の言うことを聞かないときの常套句だった。サーカスの皆さんには失礼な話だが、昭和30年以前の本土では、そういう言い廻しをしていた。
「トロイメライ」はドイツ語。意味を検索したら「夢想」だった。登場人物が夢を見ているのか、それとも読み手を夢見心地させるからか?。なお、沖縄の方は、よく「ア%$#&ヨー」と叫ぶが、何を言っているのかよく分からなかった。声が大きいので沖縄方言の掛け声かと思っていたが、この本を読んで、何と言っているのかよく分かった。「アギジャビヨー 」だった。同じような意味の言葉に「アキサミヨー」というのもある。19世紀から変わらない言葉なんて驚きだ。意味をお知りになりたい方は、この本のご講読を。平成22年の発刊なので、書店にないときは図書館へ。
◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「ヒストリア」(池上永一著)」⇒こちらから
・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから
・「翡翠色の海へうたう(深沢 潮著)」⇒ コチラから
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