スリーパー(楡周平著)


Sleeper


『スリーパー』

角川書店発行

1,700円(税抜き)

アメリカ、シンガポール、東京とめまぐるしく場面が変わるので、沖縄だけが舞台ではないが、クライマックスは沖縄の米軍基地周辺がメインとなる。 あらすじは、殺人罪で米国の刑務所に服役する由良(ゆら)憲二は、任務と引き替えに出獄、CIAの工作員となる。やがて秘密工作員(スリーパー)として活動をはじめた由良のもとに、沖縄・嘉手納基地でのミサイルテロの情報が…。中国、北朝鮮、そしてアメリカと、各国の思惑が絡み合い、行き着く先は…由良は日本を守るため、死地に赴く…!最新のハイテク情報と国際情勢をもとに繰り広げられる国際諜報戦争。著者の楡(にれ)氏は昭和32年、東京生まれ。外資系企業に勤務の傍ら作家デビュー。

この著者の作品は、数点しか読んだことがないが、経済小説あり、ミステリーあり、ハードボイルドもありとレパートリーが広い。この作品では、携帯式地対空ミサイルや劣化ウランが登場し、カジノ情報が披瀝され、顔認識システムやスマホの使用履歴、位置情報は、アメリカのキュオリシティ社(架空の社名)の検索エンジンを利用すると個人のプライバシーは無きに等しいなど、フィクションとは思えない設定。前半は冗長に流れがちだが、最終場面は、手に汗握るスリリングな展開となる。最後に、楡氏のシリーズ作品のキャラクターが登場するなど、ファンサービスも旺盛だ。

発刊されたのは今年の2月だが、時代背景は民主党政権の時代という設定になっている。北朝鮮の張成沢が粛清された以降が舞台なら、物語はどのように変わっていったか興味深い。また、政治家や日本政府の現状が、ことごとく扱(こ)き下ろされているが、内容は当たっているだけに、この国の行く末が心配になってくる。


◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
  ・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
  ・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
  ・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
  ・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
  ・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
  ・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
  ・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
  ・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
  ・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
  ・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
  ・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「ヒストリア」(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
  ・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
  ・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
  ・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
  ・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
  ・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
  ・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
  ・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
  ・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
  ・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
  ・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
  ・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
  ・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
  ・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
  ・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから
  ・「翡翠色の海へうたう(深沢 潮著)」⇒ コチラから

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