「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)


本日の栄町

『本日の栄町と、旅する小書店』
1,600円+税 ボーダーインク

著者の宮里綾羽氏は、昭和55年、那覇市生まれ、多摩美術大学卒。平成26年から栄町市場にある宮里小書店の副店長となり、市場で働く人々にもまれながら日々、市場の住人として成長していく。

出版社の本の紹介には、次のとおり書かれている。
市場で出会ったひと、旅で出会った本。二度見してしまう風景、うたた寝する市場、旅の余韻、何度も読み返す本。世界はこんなにも愛おしい。沖縄県那覇市の栄町市場にある小さな本屋さん「宮里小書店」の副店長がつづるカウンター越しのエッセイ。沖縄の市場の魅力的な人々、旅したなかで思い出す本、ゆったりと流れる時と忘れられない光景。思わず笑い出したり、時にじんとわり涙するエッセイ集です。

副店長である筆者(店長は父親)が、書店の店番をしながら通りを眺めたり、市場のなかをアッチャーアッチャー(島言葉で、歩き回る、散策する、徘徊するという意味)して、市場で働く人々のことを暖かく見守るように観察した記録というかエッセーというか…(カッコ内はサイトの管理人が補注)。


少しだけ引用させていただくと、前日まで元気に歩いていた人が杖をついて歩いていたら「あい! 足が3本になっているさ!」と声をかけたり、病院帰りのお客さんが、「薬が増えるんだよ。もい、いやさー」と言うと、「デザート増えたんだねー」とウイットに富んだ おしゃれな会話を交わす。栄町市場で働く一風変わった人たち(失礼!)のユーモアと暖かさが伝わってくる。

「今日の栄町市場」のページは、市場の店の紹介というより、市場で働く人たちが、いかに素晴らしい人たちばかりかという紹介となっており、多くが口語体で綴られている。栄町市場を知り尽くした人でないと語れない本当のグルメガイドである。これ一冊あれば、それぞれの店のおすすめメニューを逃すことはない。最近は、ネット情報を見て栄町市場に観光客もやってくる。私は、夜は3回しか行ったことがないが、一度は前に行った居酒屋に人があふれていて座る場所もなかった。これ以上、メジャーになったら、人々の優しさも失われてしまうかもしれない。本屋さんの店番というと、ぼーっと座っているように見えるが、この著者は違っていた。

後半は、著者の子供の頃の思い出話が続き、終盤は、舞台が韓国、香港、パリへと移っていくので、このサイトでは触れないが、筆者の視点は変わることがない。なお、栄町市場について詳しくは ⇒ コチラから



◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
  ・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
  ・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
  ・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
  ・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
  ・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
  ・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
  ・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
  ・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
  ・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
  ・「祭祀のウソ。ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
  ・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
  ・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
  ・「ヒストリア(池上永一著)」⇒こちらから
  ・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
  ・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
  ・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
  ・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
  ・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
  ・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
  ・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
  ・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
  ・「波の上のキネマ」(増山実著)」⇒ コチラから
  ・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
  ・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
  ・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
  ・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
  ・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
  ・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから
  ・「翡翠色の海へうたう(深沢 潮著)」⇒ コチラから


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背景の「読谷山花織」は、「ゆたんざはなうぃ」または、「よみたんざんはなおり」と読みます。琉球王朝のための御用布として織られていました。絶滅寸前だったものを、昭和39年に読谷村で「幻の花織」として復活しました。