沖 縄 移 住 生 活 始 め ま し た
1,650円 講談社
著者は、2003年生まれで沖縄県那覇市出身。2025年、琉球大学人文社会学部在学中に発表したこの作品で、第67回群像新人文学賞を受賞してデビュー。また、同作で第46回野間文芸新人賞を受賞した 。
本の帯には、先祖の魂が還ってくる盆の中日、幼い少年と少女の前に、78年前に死んだ日本兵の亡霊が現れる。沖縄に深く堆積したコトバの地層を掘り返し、数世代にわたる性と暴力の営みを描く。 時空を超えて紡がれる圧巻の「語り」が、歴史と現在を接続する! とある。
タイトルの「月ぬ走いや、馬ぬ走い」 の読みは「ちちぬ はいや うまいぬ はい」。ヤマト言葉に直訳すると「月の走りは、馬の走り 」となり、意味は、著者の言葉で言うと、「馬さながらに歳月は駆け抜けてしまうのだから、時をだいじにすべし 」つまり、「光陰矢の如し」を意味する沖縄言葉である。沖縄の昔の人は、こんなかっこよく言っていた。
まず、タイトルの読み方が、帯に書かれたルビを見るまで分からなかった。初見したときは、意味も分からなかった。本文には改行がないページが延々と続くのだが、全く読みずらい。
途中、文字の上に取り消し線があるが、線を入れて、あえて何か意味を持たせているのか?。その部分は、読ませたいのか、削除したかったのか、消された部分を読むと、何となく意味は分かるのだが、わざわざ思わせぶりな表現はしないで、ズバリ言いたいことを、そのまま表現してもいいのでは…。どんなんかというと、文中にこんな部分が何ページもある。 校正中の原稿を見せられているみたいで、読めるけれど読みにくい。
それと、ところどころ出てくるの沖縄言葉は、それほど気にはならないが、
ヤマトンチュには意味不明もあるだろう。また、短編連作集なので、どの部分を切り取って評したかいいのか悩むところだ。
先の大戦から現在までの沖縄の歴史を14人の「語り手」が、それぞれの視点で描いた一連の物語は、映画のシーンのように流れていく。過酷で悲しい出来事ばかりが続いた矛盾に満ちた沖縄を、この作品が如実に伝えている。私が書評するより、作家先生の評の方が的を得ているのでご紹介する。
島田雅彦氏
島尾敏雄ほか先人のエコーを随所に響かせながら、沖縄に深く堆積したコトバの地層を掘り返し、数世代にわたる性と暴力の営みを、『フィネガンズ・ウェイク』的な猥雑さで、書きつけた作品。Z世代のパワフルな語部の登場を歓迎する。
古川日出男氏
十四章の構成で沖縄の近現代史を描き切る、しかも連関と連鎖、いわば「ご先祖大集合、ただし無縁者も多い」的な賑わいとともに描き切る、という意図はものになった、と私には感じられた。/この小説はほぼ全篇、ある意味では作者自身のものではない言葉で綴られていて、だからこそ憑依的な文体を自走させている。つまり、欠点は「長所」なのだ、と私は強弁しうる。要するにこの「月ぬ走いや、馬ぬ走い」は、小さな巨篇なのだ。
本人のことば
読んだものを茫然とさせ、彼のいままでを氷づけにし、そのうえで、読むことをとおしてあたらしい魂を宿らせる、そんな小説でありたい……テクストでの魂込め(まぶいぐみ)とでも呼ぶべきところが、ぼくの目標です。
◎沖縄を題材にした著作で、このサイトでご紹介しているのは、(出版順ではなく、私が読んだ順)
・「風景を見る犬(樋口有介著)」⇒こちらから
・「Juliet(ジュリエット/伊島りすと著)」⇒こちらから
・「水滴(目取真 俊著)」⇒こちらから
・「太陽の棘(原田マハ著)」⇒こちらから
・「スリーパー(楡周平著)」⇒こちらから
・「鬼忘(きぼう)島(江上 剛著)」⇒こちらから
・「あたしのマブイ見ませんでしたか(池上永一著)」⇒こちらから
・「テンペスト(池上永一著)」⇒こちらから
・「黙示録(池上永一著)」⇒こちらから
・「トロイメライ(池上永一著)」⇒こちらから
・「ほんとうの琉球の歴史(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「本屋になりたい」(宇田智子著)」⇒こちらから
・「ニライカナイの風」(上間司著)」⇒こちらから
・「トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ(池上永一著)」⇒こちらから
・「豚の報い(又吉栄喜著)」⇒こちらから
・「祭祀のウソ・ホント(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「沖縄の新聞は本当に『偏向』しているのか(安田浩一著)」⇒コチラから
・「辻の華(上原栄子著)」⇒こちらから
・「宇喜也嘉の謎(渡久地十美子著)」⇒こちらから
・「ヒストリア(池上永一著)」⇒こちらから
・「ウィルソン沖縄の旅 1917(古居智子著)」⇒こちらから
・「武士マチムラ(今野 敏著)」⇒こちらから
・「本日の栄町市場と、旅する小書店(宮里綾羽著)」⇒こちらから
・「秘祭(石原慎太郎著著)」⇒こちらから
・「ユタが愛した探偵(内田康夫著)」⇒こちらから
・「崩れる脳を抱きしめて(知念実季人著)」⇒こちらから
・「沖縄『骨』語り(土肥直美著)」⇒ コチラから
・「天地に燦たり(川越宗一著)」⇒ コチラから
・「波の上のキネマ(増山実著)」⇒ コチラから
・「神に守られた島(中脇初枝著)」⇒ コチラから
・「宝島(真藤順丈著)」⇒ コチラから
・「あなた(大城立裕著)」⇒ コチラから
・「入れ子の水は月に轢かれ(オーガニックゆうき著)」⇒ コチラから
・「ジョージが殺した猪(又吉栄喜著)」⇒ コチラから
・「桃源(黒川博行著)」⇒ コチラから
・「翡翠色の海にうたう(深沢 潮著)」⇒ コチラから
・「渚の蛍火(坂上 泉著)」⇒ コチラから
・「墜落(真山 仁著)」⇒ コチラから
・「沖縄ルール(伊波 貢著)」⇒ コチラから
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