沖縄の魔よけ


沖縄の森には妖怪「キジムナー」が住みつき、街角には「マジムン」や「ヤナムン」などの魔物が潜んでいる。沖縄の生活の中で魔よけと厄払いは、切っても切り離せない。また、沖縄の皆さんは、日常生活や行事でも先祖の霊をすごく大切にする。そして、悩みごと、相談ごとはユタにご選択を仰ぎ、家を建てるときには、生活の便利さより風水が優先し、どこの家でもヒヌカン(火の神様)を祀って祈りごとをする。ヒヌカンは厄払いもしてくれるので、決しておろそかにするようなことはしない。はたまた街を歩けば、「シーサー」や「石敢當(いしがんとう)」をひんぱんに見かける。これらは飾りモノではなく、日常生活の「魔よけ」としての役割を果たしている。

今回は、沖縄で生活するうえで知っておきたい「魔よけ」についてご紹介する。沖縄の二大魔よけは、前述の「シーサー」と「石敢當」である。「シーサー」については、このサイトの別ページにご紹介している。⇒ こちらから。「石敢當」は ⇒ コチラから。このほか、
◎ヒンプン…外から入ってくる魔物をはね返す。もともと中国語の屏風(ひんぷん)のことで、家の門と玄関の間にある衝立のようなもの。沖縄の魔物は角を曲がるのが苦手といわれ、直進して入ってこないようにと設けられている。また、外からの目隠しにもなる。古くからの家には、たいていある。これは、昔、観光で沖縄に来たときバスガイドが教えてくれた。

◎ゲーン…ススキの葉を十字に結んだもの。お盆の後の旧暦の8月ごろは、多くの魔物がうろついているので、門や家の四隅にゲーンを挿して結界を張り巡らせて魔物を追い払うのだ。私も初めて見たとき、神事に使うものだろうとは思ったが、名称が分からない。ネットで「沖縄、ススキ、神事」で検索して名前を知った。ゲーンは大型だが、小さいのは「サン」といって、弁当や重箱を屋外に持っていくとき、食べ物などをヤナムンから守り、腐らないようにその上に置くのだそうだ。もっと小さいサンは「サングヮー」ともいう。

◎スイジガイ…特徴のある形をした大きな貝だが、玄関につるしたり、家の周りにおいて魔よけとした。漢字で書くと「水字貝 」、形が「水」という字に似ているため、火災よけとしての役割もあった。なお、このスイジガイが登場する小説について紹介しているのは、⇒コチラから。名護市と宮古島市(旧平良市)の「市の貝」に指定されている。市町村の花とか木は、よくあるが、市の貝があるというのは、さすがに海に囲まれた沖縄だと感心した。

ゲーン ヒンプン スイジガイ
ゲーン ヒンプン スイジガイ

《追記》
強烈な魔よけ…沖縄ではしめ縄のことをヒジャイナーといい、集落の出入り口には、ヒジャイナーを張り巡らせる。ヒジャイナーを張って魔界と人間の世界の境界としているのである。かっては、産屋にも張り巡らせた。生まれてくる赤ちゃんの魂が魔ものにとられないように、という魔よけの意味があった。
しかし、もっと強烈な魔よけがある。それは、動物の血を塗りつけた小枝である。それを家、屋敷にさすのである。血を塗りつけた小枝が悪魔を追っ払うとする考えがあり、悪霊や悪病が入り込むのを防ぐのである。御願ドットコムの座間味栄議さんによれば、地域によって若干の差異があるが、おおむね旧暦2月の上旬ころにシマクサラシというヤナカジ・シタナカジ(悪風・悪霊)、疫病などが集落や家内に入らぬように行われる行事行事が実施され、ヤナカジ・シタナカジが入り込まないようにしめ縄に牛や豚の骨をくくりつけたものを集落に通じる道に張り、御嶽(うたき)に線香、花米、酒などをお供えして祈願する。もともとは本島の中・南部に分布していた行事で、北部ではほとんど見られないという。

《ご参考》
キジムナーとは、沖縄諸島に伝わる伝説上の妖怪。人間と共存するといわれる。マジムンとかヤナムンは魔物のこと。文化人類学の饒平名健爾 (よへなけんじ)琉大教授によれば、幽霊は4種類に分類出来る。
ユーリー…人形・白衣・長髪。
ヤナムン…子孫無く供養絶えた死者の霊・食物の初物を奪う。
マジムン…種々変化して人を驚かす・マブイ(魂)を奪う・病気をもたらす。
シチ・シチマジムン…雲や霧の如き不形・人々を連れだし迷わせる、と分類しておられる(「沖縄県史、第22巻民俗1号」より)。

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