ヒージャーでおもてなし


北海道料理の代表がヒツジ (ジンギスカン)なら、沖縄の代表格はヤギである。沖縄ではヤギのことは「ヒージャー」という。樋で水を引いてくる樋川も「ヒージャー」というが、発音の違いはヤマトンチュの私では分からない。

こちらに引っ越してきた頃、新聞に「ヒージャーとふれあい」という見出しがあった。以前、聞いたことはあったが「ヒージャー」が何だったか覚えがなかった。

昭和40年の後半に沖縄来たとき、訪問先でお茶とともにヤギの生肉(刺身)を出されたことがあった。馬刺しは食べたことがあったが、ヤギは初めてだった。表面は、今、絞めたばかりのように血が滴って生々しく、おまけに、かなり臭う。箸をつけてから要らないと言っては失礼に当たるので、「スミマセン。これ苦手なんです」と言って引き取っていただいた。そのとき「ヤギ」のことを「ヒージャー」というと聞いたと思うが、すっかり忘れていた。



ヒージャー
写真は、那覇市の料理店「山海」さんのご提供


沖縄では、ヤギの肉は高級食材ということで珍重され、たいへんなご馳走ということは聞いていたが、見た目と臭いで私はGive upしてしまった。皆さんが移住してこられたとき、「ヤギ刺」が料理に出たら、お相手が歓待してくれている証拠なので、くれぐれも失礼のないように。

私は、第一印象で ”食わず嫌い” になってしまったので、先日、名護の料理屋さんで仲間数人と会食したとき、メンバーの一人が店主の友人だとかで、「ヤギ刺」を長皿でサービスしてくれたが、私だけ遠慮した。皆さんに「こんな美味しいモノ、食べないのぉ〜?。もったいな〜い。」と言われてしまった。私もヤギ料理の初対面が「ヤギ汁」だったら免疫ができたので「ヤギ刺」も食べれるようになったかもしれない。

「ヤギ汁」は、沖縄の食堂なら、たいていはメニューにあるようだから、こちらに来たとき、一度、注文されることをオススメする。ただし、「汁」だからといって、町の食堂で他の一品料理と一緒に頼まないように。定食でなくても、汁にも 一品料理にもご飯がついてくる。つまり、”トンカツ”と”ヤギ汁”と言うと、ご飯が二つになるのだ。沖縄の一般の食堂は、これが普通(割烹、料亭では、こういうことはない)。気の利いた店員さんなら、注文したときに「ご飯二つになるよぉ~」と教えてくれる。なお、スーパーにレトルトパックで「ヤギ汁」が売っているので、お試しを。かすかにケモノ臭さはあるが、これが平気でクリアできれば、ヤギ刺もOKかも。

ヤギ料理専門店では、独特の臭みを抑えるため、フーチバー(よもぎ)やショウガを添える。しかし、私と同様、ヤギが苦手という人のために、最近は、ヤギ肉のハンバーグ、ピザ、ハンバーガー、ラーメンなども登場し、新たなヤギ料理に取り組んでいる。

なお、このヤギ肉は、県内消費に需要が追いつかず、約6割は外国産で占められており、ニュージーランド、台湾、韓国などから輸入している、しかし、輸入肉は冷凍で来るので、生食には不向きだそうだ。JAおきなわによると、今後の品種改良や飼育技術を向上させて生産量を拡大し、地元需給率を7〜8割まで引き上げる計画だとか。ヤギ肉の価格は、平成27年11月現在の平均単価がキロ当たり、1,376円(雄ヤギ)に対し、東京枝肉市場の極上の豚肉は、541円/キロなので、この価格を比較しても、ヤギ肉は、豚より高い食材であることが分かる(新聞の市況欄にヤギ肉は掲載されていないので、古い資料でご紹介している)。

《ご参考》雌ヤギの単価は、1,080円/キロ(平成27年11月)。雌の方が安いのは、皮下脂肪が多い肉は嫌われるためだとか。単価は、ネット情報を参照。なお、松阪牛は、小売り店では5,000円/100gになる(松阪牛ギフトコム)。この異常な高値はブランドの力である。沖縄のヒージャーも将来はブランド化を目指している(JAおきなわ)。
JA沖縄山羊生産振興会の話では、県内のヤギの飼育数は平成29年には1万頭を突破したという。また、南城市の農業生産法人では、使わなくなった園芸ハウスをヤギ舎に改築して大規模な飼育をしており、その隣りの直売店とレストランでは、新鮮なヤギ肉の販売やヤギ乳を使ったジェラートやチーズ、ヨーグルトといった商品開発を計画しているそうだ。

《追記》日本の手漉き和紙が世界遺産に登録されている。和紙からの連想で手紙を思いついたので、このページに追記する。 「♪〜白ヤギさんからお手紙着いた。黒ヤギさんたら読まずに食べた〜♪」という童謡がある。タイトルは「やぎさんゆうびん」という。この歌詞にあるように、本当にヤギは紙を食べるか?。ネットで調べてみた。答えは「食べる」だった。しかし、「食べさせてはいけない!」とあった。その訳は・・・

昔の紙は、植物繊維で出来ていたので、ヤギが食べても消化する。ところが現代の紙は、昔の紙とは成分が異なり、ヤギが消化することができない化学物質が混ざっている。また、ティッシュ・ペーパーでは水に溶けないようにする湿潤紙力剤が、新聞紙など印刷物ではインクや機械油などが、その用途にこたえるためのさまざまな薬品・填料・顔料が、表面に塗布されたり混ぜ込まれたりしている。そのような物質は、ヤギの消化器官でも消化することができない。はっきりと有害となるものもあり、体外へ排出されることなく蓄積され、腸閉塞を起こしてしまうこともある。ひどい場合には、死に至ることさえあるという(以上、Wikipediaほか)。

コウゾやミツマタなどの植物だけを原料とする和紙なら問題はないと思われるが、そういう和紙は、希少品で価格も驚くほど高い。わざわざヤギに食べさせるのは、もったいない。大事な手紙は、和紙であってもなくても、白ヤギさんにも黒ヤギさんにも食べさせたりしないように (^-^) 。

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