沖 縄 移 住 生 活 始 め ま し た
沖縄には、目に見えないモノが見える人がいる。「ユタ」とか「シジダカサン」と呼ばれる。「ユタ」や「シジダカサン」は、霊界の姿や動きを見通すことのできる霊能力者のことである。「ユタ」は、恐山の「イタコ」と語源が同じという説もある(金久正著「増補・奄美に生きる日本古代文化」)。「ユタ」と「イタコ」に共通しているのは、占いのように「当たらずといえども遠からず」ではなく、そのものズバリ言い当てることだ。普通の人に、そんな能力はないが、見える人が沖縄には大勢いる。それを職業としている人が「ユタ」(沖縄の民間信仰に詳しい沖縄大講師、波平エリ子氏によれば、その数5,000人といわれている)で、職業にはしていないが、そういう能力が高い人は「シジダカサン」(霊力が強い人)と呼ばれ、その能力を人に知られないようにしている人も居る。そういう人は「どこそこの誰々さんは見えるらしいよ」という噂話になる。「ユタ」のほとんどは女性だが、「見える人」のなかには男性もいる。家内が「道の駅○○の食堂で働いている男の子は見えるらしいよ」という話を聞いてきた。観光で行ったときに立ち寄った。若い男の子はいたが、「君、見える人?」と本人に聞くわけにはいかないので、ほかの人に「あの男の子、見える子ですか?」と聞いてみた。「知らないサ〜」と返事された。この子は、オモテ向きには内緒にしているのだろう。
よくない話も聞いた。高額な報酬を請求する「ユタ」がいるのだ。それも、レベルの低い「ユタ」が金儲けに走るという話だ。これは、私の入ったサークルの会長から聞いた。「ユタ」にも、よく見える人から、少ししか見えない人まで、ランクがあるのだそうだ。Wikipediaには、「ユタ」だといって看板を上げている人には偽者(ニセモノ)もおり、そういう人は金儲けでやっている。「ユタ」の言っていることに科学的な根拠はないので、何も見えない普通の人は、本当かどうかは見分けられない(ユタをかたって金儲けをする者は昔からおり、敢えて不安を煽るような事を言ってお金をだまし取る、いわゆる霊感商法の一面も持っている)と書かれていた。
神様のお告げに従い、神に仕えているという渡久地十美子さんは、「力を持っていないユタは、相手がお金を持っていると知ったら、最後の一滴まで搾り取ろうと、意味のない拝所巡りや拝みを繰り返す。拝みを何度もやり直すことはありえない」と、筆者は最初から終わりまで、ユタを徹底的に批判し、騙されないようにと訴えている。
ここまでは、噂話や人から聞いた話しだが、ここから先は、実体験に基づく話をしたい。家内が人から紹介された「ユタ」にご宣託を仰ぎに行った。世間話を終え、本題に入った。家内は引っ越しするなら何処がいいのか、相談に行ったのだが、「ズバリ○○市」と答えられた。「どうして?」と家内が聞いたら「見えた」のだそうだ。料金は1,000円だという。「ユタ」の謝礼の相場は1万円(写真家の酒井透氏によれば、相談料は100万円というユタもいるそうだ)と聞いていたが、家内が相談した方は、金儲けでしているのではないからだという。余談だが、その方はアパートにひとり住まいで、家内の相談中、私はそのアパートの駐車場で本を読みながら終わるのを待っていた。そこに雨が降ってきた。その部屋のベランダに布団が干してあった。知らせてあげようと思ったが、ご宣託の最中に邪魔をしてはいけないと迷っていたら止んでしまった。雨は止んだが、布団は濡れてしまった。知らせてあげればよかったかなァ?
なお、「ユタ」とよく比べられる存在に「ノロ」が居る。漢字だと「祝女・神女」と書く。「ノロ」と「ユタ」との違いは、はっきりしていて、「ユタ」が一般人と接するのに対し、「ノロ」は、その能力を琉球王朝のために捧げていた女性司祭という存在だそうだ。つまり、「ノロ」は、琉球王朝に仕えた神職者であり、一般人の相談に乗ることはない。琉球王朝の滅亡した今、地方の一部に存続しているにすぎないそうだ。
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