オトーリ(御通り)


「オトーリ」とは、知る人ぞ知る、沖縄県宮古島に伝わるお酒の作法である。もともとは古代の神事で、神に捧げたお神酒を平等に与えるために廻し飲んだというというのが由来とされている。現在では、お酒の飲み方そのものである。やり方は、まず親となる人が口上を述べ、酒を飲み干した後、隣の人に杯を廻す。飲み干したら更に隣の人に廻す。最後に親まで廻ったら飲み干して、次の人が親となり同じことを繰り返す。それが延々と続く。親の口上中は、私語厳禁。宮古島では3人集まれば「オトーリ」が始まるという。

これとよく似ているのが、鹿児島県与論島の「与論献奉(よろんけんぽう)」である。大きな杯に焼酎を注ぎ、飲み干した後、杯を逆さまにして中の酒が残っていないことを示し、順番に廻してゆく。オトーリと同じく酒を飲み交わし親交を深める独自の酒文化である。私の会社員時代の先輩で、仕事で与論島を訪れたとき、与論献奉でおもてなしを受けたが、酔いつぶれてしまったと言っていた。その先輩は、社内では大酒豪の一人だったが、それでも太刀打ちできなかったというから、よほどの酒飲みでないと輪に参加できないだろう。



オトーリ

上の写真は、「オトーリ・イエローカード」と言うものである。酒に強くない人が「オトーリ」に誘われたとき、「医者から止められいるので・・・」と、やんわりと言っても、なかなか通用しない。そんなとき、水戸黄門の印籠のように「これが目に入らぬか」と断るときに使う必殺カードである。これを見せれば笑いが取れるので、断っても角が立たないというが、効果のほどは・・・。ただし、肝機能検査で、飲酒によって健康障害を生ずる恐れがある人にのみ発行される。すでに障害が生じている人にはイエローではなく「オトーリ・レッドカード」が交付されるという。(この稿は、沖縄の季刊誌「おきなわいちば」を元に作成しました)

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