沖縄の川にはティラピアがいる


ティラピア

写真は図鑑コムよりお借りした

日本各地に生息するブラックバスやブルーギルなどの外来魚が問題視されるようになって久しいが、沖縄には、もっと困った外来魚がいる。それは「ティラピア」である。沖縄は、冬でも本土と比べれば暖かいので、人間だけでなく熱帯の魚までもが移住?してくるのである。

私は昭和40年代、岐阜県の平湯温泉(注1)でティラピアの刺身を食べたことがある。見た目も味も鯛のようだった。聞けば水産試験場から持ち込まれたナイルティラピアを温泉の熱を利用して養殖していたという。なお、南米出身のピラニアではなくティラピアなので、お間違いのないように。今は鯛の価格が安くなっているので、平湯温泉に確かめてはいないが、もう養殖はしていないかもしれない。


そのティラピアが沖縄諸島の河川や湖沼で、大量繁殖して生態系に深刻な影響をもたらしているというのだ。この魚は、成長すると体長80センチと非常に大きくなり、また性格も狂暴で、縄張りに侵入してくる他魚をしばしば執拗に攻撃するとか。このため、日本では要注意外来生物に指定されており、世界ワースト外来生物100にも選ばれている札付きのワルである。

釣り武士さんのHPには、「沖縄の汽水域、住宅街を流れる川、やんばるの清流、はたまたダムやため池のどこを見てもティラピアがいる」という。種類も、モザンビークティラピア、ナイルティラピア、ジルティラピアの3種類が生息し、ブラックバスより勢力を増しているそうだ。写真で見ただけだが、那覇市内を流れるガーブ川(注2)で群れを成して泳いでいた。

なお、沖縄にティラピアが持ち込まれたのは、戦後の食糧難のとき、食用として輸入されたものらしいが、マングースと一緒で、一度、大量に繁殖してしまったものは、根絶するのが難しいという。

また、沖縄のティラピアを琉球大学が検査したところ、使用が禁止されている化学物質クロルデンの検出濃度が1グラム当たり0.019マイグラクロム検出され、人体に影響を及ぼす許容摂取量の基準値に迫っていると琉球新報の記事に出ていた。クロルデンという有害物質は、白アリ駆除の殺虫剤として使われていたものである。

ということは、沖縄のティラピアは、獲っても食用になりそうもない。

(注1)平湯温泉…岐阜県高山市(旧上宝村)にある温泉地。その昔は秘湯だったが、安房トンネルの完成と上高地、乗鞍のマイカー交通規制によりシャトルバスの基地となり、すっかり観光地化してしまった。
余談だが、平湯温泉のすぐ近くの奥飛騨温泉郷では、沖縄のフルーツである「ドラゴンフルーツ」を70℃の温泉熱を利用して栽培し販売している。1個1,000円〜だそうなので、沖縄より高いなぁ。
(注2)ガーブ川…久茂地川の上流。那覇市の中心部を流れる。

=NEW=
《追記》 不妊オスを使ってティラピア駆除へ
問題魚「ティラピア」を駆除する動きが出てきた。沖縄美ら島財団総合研究センターは、不妊化したオスを使って外来魚テラピアの駆除を目指す実証実験を始めたのだ。同センターでは、すでに実験での効果を確認しており(放流した池で縄張りを持つ雄の8割が不妊化したオスになっており、メスが正常なオスに出合える確率は確実に低くなっている)、屋外での成否判断には2〜3年かかるという。
駆除の手法は
(1)不妊化した個体を放つ
(2)正常な個体と繁殖しても不妊のため卵は受精せず死滅する
(3)個体数が減る
の3段階を繰り返すことで駆除を目指す。
不妊オスは、稚魚を37〜38度の高水温で約2〜3カ月飼育すると不妊化するという同センターの特許技術で作られる。遺伝子操作も薬品も使っておらず、自然環境への悪影響はほとんどないそうだ。

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