沖 縄 移 住 生 活 始 め ま し た
6月24日、1本の映画が全国公開される。タイトルは「ハクソー・リッジ」。Hacksawの意味は「弓鋸」。Ridgeは「崖」。ノコギリのような断崖という意味である。これは米側がつけた名前。日本名は前田高地である。場所は浦添市の浦添グスク(注1)から為朝岩(注2)に繋がる高台で、全長は約3キロ、高さは150メートルほどある。
昭和20年4月1日、米軍は将兵183,000人という圧倒的な兵力携えて上陸し、日本軍司令部のある首里攻略に向けて侵攻した。日本軍は浦添前田高地に陣地を構え、侵攻してくる米軍を迎え撃った。米軍は眼前にそびえる絶壁の前田高地(ハクソー・リッジ)を制しないと首里を攻略できない。戦車や装甲車が侵攻し、おびただしい数の銃弾が飛び交い、空からは爆弾が投下され、海からは暴風のような艦砲射撃に見舞われ、兵士だけでなく多くの住民も犠牲になった。12日間にわたって続いた激しい攻防は、当時の浦添村全住民9,217人のうち45%にあたる4,112人が犠牲となり、2,077戸のうち469戸が一家全滅した。前田高地は、米軍資料によれば、「ありったけの地獄をひとつにまとめたようなもの」、また、「魔の高地」と評された沖縄戦最大の激戦地となったのである。映画は、ここをメインの舞台として繰り広げられる。
なお、前田高地周辺には、カンパン壕、兵員壕など、多くの壕が現在でも残っている。詳しくは ⇒ コチラから。なお、本文はHP「前田高地の戦闘」を参考に作成、犠牲者の数、写真は浦添市のHPよりお借りした。
◎映画の解説(映画comより)
メル・ギブソンがメガホンをとり、第2次世界大戦の沖縄戦で75人の命を救った米軍衛生兵デズモンド・ドスの実話を映画化した戦争ドラマ。人を殺してはならないという宗教的信念を持つデズモンドは、武器を持たずに戦場へ行くことを許可され、激戦地・沖縄の断崖絶壁(ハクソー・リッジ)での戦闘に衛生兵として参加。負傷した仲間たちが取り残されるのを見たデズモンドは、たったひとりで戦場に留まり……。この先は、映画をご覧ください。2017年の第89回アカデミー賞で編集賞と録音賞の2部門を受賞した。
(注1) 浦添グスク…詳しくは ⇒ コチラから。
(注2) 為朝岩…米軍はニードルロック(針のようにとがった岩)と呼んだ。詳しくは ⇒ コチラから。
《追記》
公開された「ハクソー・リッジ」を見てきた。その感想を述べたい(ネタバラシ部分があるので、映画を見る予定の方は、お読みにならない方がいいかも)。
武器を持たない兵士が主人公というこの映画は、戦争映画としては異例なシュチエーションである。自らの命を懸けて仲間の兵士を救う勇気は、信念なのか、狂気なのか、それとも信仰の力なのだろうか。戦争の惨たらしさ、残酷さを描いた圧倒的な映像と音響は、まるで、自分のすぐ間近で起こっているかのように思えたほどだった。
多くの戦争映画は、徹底的に相手国を悪者に仕立て上げ、自分たちの正統性を主張するだけというものが多いので、私は反戦映画でない限りめったに見ることはない。しかし、今回は沖縄が舞台で、しかも武器を持たない一衛生兵が戦場に飛び込み、75人の命を救ったという前評判だったので見たのだが、背景の画像は一切省略されているので、前田高地と知っていなければ、どこで行われた戦闘だったのだろうかと思うほど。映画を見終えた知り合いの地元の古老も、前田高地とは全然違う場所だよ。どこで撮影したのだろうね と言っていた(実際のロケ地は、「たかこが発信する豪の観光・ワーホリ情報など満載ブログ」によれば、 オーストラリアのニューサウスウェールズ州だそうなので、昔の前田高地を知っている人は、撮影場所ではないことが分かるだろう)。
この戦闘では、上記の本文のとおり、浦添村(当時)の人口9千人の半数近くが、無差別爆撃や艦砲射撃などの巻き添えで命を失くした。映画では、そのことには全く触れられていない。米兵の戦死者は尊い犠牲というなら、何の罪もない住民の犠牲は何だったのだ。主人公のデズモンドさんの行為自体は、殺すか殺されるかという戦場にあって 誰にもまねのできることではないので、驚愕に値することは言うまでもないが、映画を見終わった感想は、戦争を正当化し、米軍を神聖化し、アメリカは正義の戦に勝ったと自己主張したにすぎない という感は拭えなかった。
舞台が浦添市の前田高地という設定だったことで、浦添市は6月の広報誌の多くの誌面を割いて特集記事を組んだ。読み応えのある誌面だった。80才以上になられる戦争体験者への聞き取りを中心に、平和というテーマに取り組んだ編集者の姿勢を評価したい。リンクしたので、お読みになる方は ⇒ コチラから。
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