「ちーぱっぱ」って何?



ツワブキ


うちなんーちゅ(沖縄県人)の方と山登りをしているとき、その方が、「あ~、"ちーぱっぱ" だ。」とつぶやいた。スズメの群れでも発見したのかと思ったら、葉っぱの大きい、黄色の花をつけた草のことだった。私が、「これは、"つわぶき" じゃあないですか?」と言うと、沖縄では「ち-ぱっぱ」というのだと教えてくれた。

Wikipediaで「ちーぱっぱ」と検索しても何も出てこないが、「つわぶき」で検索すると、キク科の多年草で、1~2年で枯れることは無く、葉は食用になるとある。漢字で書くと「石蕗、艶蕗」とあり、俳句では初冬の季語だそうだ。長い軸を持った葉っぱはフキに似ており、その表面はワックスを塗ったような光沢があるところから、「ツヤのあるフキ(蕗)→ツヤブキ」が転じて「ツワブキ」となったと言われる。沖縄には「リュウキュウツワブキ」という種類もあるそうだ。沖縄に生えるツワブキの変種で、葉のフチが鋭く"くさび形"になることが多い。しかし、葉の形は同じ群落の中でも変異の幅が大きく、ツワブキと見分けのつかない(いがりまさしHPより)ものもあるそうだ。

方丈の 隅まで日差し 石蕗(つわぶき)の花 (辻田明)

全国には方言名もたくさんあり、「オカバス」「イワブキ」「ツワ」「オバコ」などがその代表。島根県の津和野は「ツワの多く生える場所」が語源となっている、と言うエピソードもある(HP「ヤサシイエンゲイ」より)。沖縄では成長がよく、本土では大きくても数十センチくらいのものしか見たことがなかったが、こちらでは草丈は1メートルにもなり、葉っぱも手より大きくなる。山野はもちろん、道路の街路樹の下や公園の端、畑の畔、つまり土のあるところには、どこにでも生える。花期は11月下旬から咲き始め、1月中旬ころまでが最盛期。1月16日に首里城へ行ったら、歓会門の西側の散策路にいっぱい咲いていた。本土の冬と比べれば、まるで冬らしくない沖縄の冬に彩を添えていた。

辞書で調べたらツワブキの別称を山蕗(ヤマブキ)というと記されてあった。ツワブキと花の山吹とは関係ないのだが、山吹と言うと太田道灌の逸話を思い出す。若き日の太田道灌が蓑を借りようと ある小屋に入ったところ、若い女が何も言わず山吹の花一枝を差し出したので、道灌は怒って帰宅した。後に山吹には「七重八重花は咲けども山吹のみのひとつだになきぞ悲しき(七重八重に、あでやかに花は咲くけれども、山吹には実の一つさえもないのがふしぎなことだ=八重の山吹は雄しべが花弁に変化し、雌しべも退化したもので、実がならない。「実の=蓑は一つもない」)」の意が託されていたのだと教えられ、無学を恥じたという話である。この歌は、平安時代の『後拾遺和歌集』に記載されているのだが、この時代に八重の山吹があったことが分かる(歌の解釈は国会図書館レファレンス協働データベースより)。

なお、サークルの70歳代の男性が、「私の幼少の頃は”ちーぱっ ”と言っていた」と言われた。同じ沖縄本島でも、所変われば…のようだ。

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