沖縄で世紀の大発見


沖縄県南城(なんじょう)市のサキタリ洞(どう)遺跡(注1)で、世界最古となる2万3千年前の釣り針が見つかった。素材はニシキウズ科の貝。国内初の旧石器時代の漁労具で、人類が少なくとも そのころから海や川の幸を利用する技術を持っていたことをうかがわせる発見だ。たかが「釣り針」くらいで、何が世紀の大発見だ、などと馬鹿にしてはいけない。釣り針で魚を獲る漁法は、地球上では沖縄で始まったのかもしれないのだ。

釣り針は幅1.4センチ。地表から1メートルほどの層で見つかった。私は日本史を専攻していたので、学生時代に発掘の実習やバイトをしたことがあったが、1メートルの深さから たった1.4センチの針を発見するのが、いかに大変な作業であったのかよくわかる。この層の木炭を放射性炭素年代測定をもとに調べた結果、2万3千年前のものと判明した。制作途中の釣り針も出土しており、同じ年代のものと推定される。

造り方は、貝の底部を割り、石などで磨いて加工したらしい。同じ層からはアオブダイ(注2)や大ウナギの骨も見つかっており、これらの魚を釣った可能性もある。また、大量に見つかったモクズガニの爪の分析の結果、カニが最も成長する秋に採取されたことが分かったので、カニの旬の時期に食べられていたと見られ、調査を担当した沖縄県立博物館の藤田氏は「狭い島では陸上資源が乏しく、旧石器人が生活できなかったとの仮説があったが、意外とグルメな暮らしぶりだったようだ」と話している。この遺跡からは、これまで穴を開けた貝製ビーズも出土し、それに繊維質の紐を使ったとみられることから、釣り針に紐を結び、魚をとったと考えられるという。

貝製の釣り針は東ティモール(東南アジア)のジェリマライ遺跡でも発見されているが、年代が2万3千年から1万6千年前と幅があり、特定できていなかった。今回の発見されたものは、下の写真のように保存状態もよいという。釣り針としては、夏島貝塚(神奈川県)で出土した1万〜9千年前(縄文時代)のイノシシの骨製のものが国内では最も古く、旧石器時代の漁労を示すものはなかった。

国立科学博物館の海部陽介・人類史研究グループ長の話…水中に潜んだ魚を引っかけて捕まえる釣りという高度な漁労法が旧石器時代にあったことを示す大発見だ。発掘調査では綿密に地層を確認してあり、年代の測定値も信用度が高い。東ティモールの釣り針と今回の釣り針に共通の起源があるのかなど、新たな研究テーマにもつながり、今後の分析の進展を期待したい。



釣り針 釣り針 地図

場所は「ガンガラーの谷」にある


(注1)サキタリ洞遺跡…沖縄本島南部にあり、洞窟などの秘境巡りを楽しめる観光地「ガンガラーの谷」にある洞穴遺跡。平成21年から発掘調査が始まり、国内最古となる約2万3千〜2万年前(後期旧石器時代)の貝製の加工用具や装飾品のビーズなどが見つかったほか、平成23年に約1万4千年前の人骨と石器が出土し、同一遺跡で人骨と石器がセットで確認された国内最古の例となった。また、遺跡からは、国内で二番目に古い3万年前の幼児の骨や、3万5千年前の焼けたシカの骨も見つかっており、この頃から旧石器人が生活していたと思われる。全身骨格の形で残っている日本の人骨の中で最も古い「港川人」が見つかった具志頭村港川(現在の八重瀬町)は、この遺跡から2キロしか離れていない。
(注2) アオブダイ…漢字で書くと「青武鯛」。岩礁やサンゴ礁に生息する大型魚で、名のとおり青みの強い体色が特徴である。イラブチャーともいわれ、沖縄の海では、普通に見られる。

以上、朝日新聞DIGITAL、中日web、琉球新報などを参考に作成。

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