元海兵隊員の犯罪


痛ましい事件が起きた。すでに新聞、テレビ等でご存知のことと思うが、本島中部の20才の女性が4月28日から行方不明となり、県警察は与那原町に住む元海兵隊員で、現在は嘉手納基地に勤める軍属の男を5月19日、死体遺棄容疑で逮捕した。新聞によると、容疑者は乱暴目的で女性に接触し、刃物で刺して殺害したと供述しているという。事件の後、県内では抗議の声が広がり、市民団体などが抗議行動を展開している。

このサイトでは、これまで直接、政治的な発言をするのは控えてきた。それは、戦後、70年以上を経過した沖縄の歴史の中で、ほんの数年間、この島で暮らしただけの者が、いかにも知ったような顔をして意見を述べることには、はばかられるものがあったからである。そんな資格が私にあるだろうかと。しかし、沖縄では、米軍絡みの凶悪な事件が繰り返し起こっている。 昭和47年5月の沖縄の本土復帰後、在留軍人と軍属とその家族による犯罪の内、殺人や女性への乱暴などの凶悪犯罪だけでも574件に達しているという。そのたびに県は綱紀粛正や再発防止の徹底を米軍に求めてきた。それに対し米軍は、幾度となく再発防止を約束したにもかかわらず、一向に改善される気配はない。そんな現状に対し、地元の皆さんと共に、憤りの声をお伝えしたい。

今回 起こった事件に、当初、在日米軍の司令官は、まるで責任回避をするがごとく、「容疑者は米国軍人ではない」「国防総省の所属ではない」「米軍に雇われている人物ではない」と主張し、軍と契約している民間会社の社員であることを強調していた。その態度は、軍属なら米軍には責任はないと言っているに等しい。

沖縄の面積は、国土の総面積のわずか0.6%。そのわずかな土地に在日米軍の関連施設の74%が集中している。私が沖縄に初めてきた昭和40年代、観光バスで島を巡った。そのとき、道路沿いの米軍関連施設には鉄条網が張られていた。それが、長く長く、延々と続いていた。バスガイドさんは、基地の周囲を金網で囲っているのか、私達が金網の中で生活しているのか分からなくなると言っていた。その姿は、あれから50年近く経った今も、全く変わることがない。

その現状に重くのしかかっているのが、日米地位協定の存在である。米軍人や軍属の犯罪には、公務中と判断されれば日本側の捜査権が及ばなかったり、公務外であっても米側が先に被疑者を拘束すれば、日本側が起訴するまで身柄の引渡しする義務がないという不平等かつ不条理な協定なのだ。過去にも、犯罪を起こした者が基地内に逃げ込み、起訴される前に国に帰ってしまったこともあったと聞いている。今回は、公務外で、身柄が日本側にあるので地位協定の特権は適用されないとは思うが、こんな協定は、一日も早く撤廃、若しくは全面的に見直しする必要がある。米軍司令官の発言のように、軍属が起こしたことに米軍は責任はないと言うなら、少なくとも日米地位協定で軍属を守る必要がどこにあるのか。

朝日新聞Webに寄れば、嘉手納基地のフェンスには、赤や黒のビニールテープで、多くの ×(バツ)が貼られているという。今回の事件に憤った住民たちの抗議の印である。嘉手納基地は容疑者の勤務先だった。翁長知事は「基地があるがゆえに事件が起きた」と語っている。その通りである。基地が無ければ、こんな事件は起こるはずもなかった。過去にも事件が起こるたび、県がいくら綱紀粛正を訴えても、米軍が再発防止を約束しても、未だかって守られたことがない。平成7年に米兵による少女乱暴事件が起こった。そのとき、沖縄県民の怒りに対し、普天間基地の返還を約束した。20年以上経った今も、その約束は果たされていないことは周知の事実である。

安部政権内に「今回の事件は、最悪のタイミング」という声があると新聞にあった。今月26日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のために、オバマ米大統領が来日するから時期が悪かった、という意味に聞こえてくる。事件が去年なら良かったのか。オバマ大統領が帰った後に事件が起こったなら良かったのか。政府の関係者は、サミットの成功やオバマ大統領の広島訪問の歴史的意味をPRすることしか考えていないのか。今年、成人式を終えたばかりという、夢もあり、希望もあり、将来もあった20才の女性の無念さを考えないのか。理由(わけ)も無く大切な娘の命を奪われた ご遺族の悲しみを推し量ることもできないというのか。

以上、事件の顛末、関係人物の発言、関係機関の動向は、琉球新報などを参考にしましたが、一切の文責は、このサイトの制作者にあります。


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